消費税増税への動きが、いよいよ加速している。民主党政権は2月中旬、消費税率の引き上げを柱とした「社会保障と税の一体改革」の大綱を閣議決定し、国会に関連法案を提出する見通しだ。それに対して自民党は、これまでの事前協議において、増税に関わる様々な課題を指摘し続け、合意を拒んできた。与党内からも反対意見が噴出するなか、不退転の決意で増税に臨む野田佳彦首相と、それを牽制する谷垣禎一総裁。与野党の協議は平行線を辿っている。自民党が指摘する消費税増税の「真の課題」とは何か。今後、民主党と足並みを揃える可能性はあるのか。谷垣総裁に本音を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 原英次郎、撮影/宇佐見利明)
――民主党政権は2月中旬、消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることを柱とした「社会保障と税の一体改革」の大綱を閣議決定しました。そして、今国会において消費税率引き上げの関連法案を提出する見通しです。これまで自民党をはじめとする野党は、消費税に関する与野党の事前協議において、様々な課題を指摘し、慎重な対応を続けてきました。民主党が推し進める消費税の引き上げを、どう評価していますか。また、今後の国会における対応をどのように考えていますか。
公約と違うことをやるなら
たにがき・さだかず/衆議院議員、第24代自由民主党総裁。1945年生まれ。京都府出身。東京大学卒。弁護士を経て、1983年衆議院議員に初当選。科学技術庁長官、金融再生委員会委員長、国家公安委員会委員長、特命担当大臣(産業再生機構担当、食品安全担当)、財務大臣(第3・4・5代)、国土交通大臣などを歴任。2009年より現職。
自民党は与党時代から、2010年代半ばに消費税率を10%へ引き上げることが必要であること、増税で得た財源を社会保障3経費(年金、医療、介護)に充てることなどを提言してきました。その意味においては、政府案との大きな違いはありません。また、これまでの党の主張を変えるつもりもありません。
ただし、与党時代に行なった増税において、自民党は色々な失敗をした経験があります。失敗すると、たいてい党の中から崩壊が始まり、最後は自分の足もとが崩れ落ちてくる。だから、増税議論については慎重に手順、段取りを踏んで、国民の理解を得なければ、きちんとした体制がつくれないことを、過去の経験から知っています。今の民主党を見ていると、こうした意識が足りないのでないかと感じます。
特に、民主党のマニフェストについては、政権発足当初から様々な矛盾が指摘されています。一国を運営する政府・与党のマニフェストがどうあるべきかという議論を詰めずして、消費増税の議論だけが進められるのは、やはりおかしい。
――民主党政権は2月中旬、消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることを柱とした「社会保障と税の一体改革」の大綱を閣議決定しました。そして、今国会において消費税率引き上げの関連法案を提出する見通しです。これまで自民党をはじめとする野党は、消費税に関する与野党の事前協議において、様々な課題を指摘し、慎重な対応を続けてきました。民主党が推し進める消費税の引き上げを、どう評価していますか。また、今後の国会における対応をどのように考えていますか。
公約と違うことをやるなら
民主主義の根幹が揺らぐ
たにがき・さだかず/衆議院議員、第24代自由民主党総裁。1945年生まれ。京都府出身。東京大学卒。弁護士を経て、1983年衆議院議員に初当選。科学技術庁長官、金融再生委員会委員長、国家公安委員会委員長、特命担当大臣(産業再生機構担当、食品安全担当)、財務大臣(第3・4・5代)、国土交通大臣などを歴任。2009年より現職。ただし、与党時代に行なった増税において、自民党は色々な失敗をした経験があります。失敗すると、たいてい党の中から崩壊が始まり、最後は自分の足もとが崩れ落ちてくる。だから、増税議論については慎重に手順、段取りを踏んで、国民の理解を得なければ、きちんとした体制がつくれないことを、過去の経験から知っています。今の民主党を見ていると、こうした意識が足りないのでないかと感じます。
特に、民主党のマニフェストについては、政権発足当初から様々な矛盾が指摘されています。一国を運営する政府・与党のマニフェストがどうあるべきかという議論を詰めずして、消費増税の議論だけが進められるのは、やはりおかしい。
私は、マニフェストの一字一句についてとやかく言うつもりはないし、東日本大震災のような緊急事態に対して臨機応変に政策を打つことも、当然だと思います。しかし、消費税をはじめ、公約した政策と違うことをするならば、やはりそれなりの手順、段取りが必要になるはず。それを疎かにしていると、民主主義の基礎が揺らいでしまいます。
ここで言う手順、段取りの方法として最も徹底した方法は、解散総選挙でしょう。ただし、それだけしか方法がないというと言うわけでもないと思うし、ここは議論が分かれるところです。
野田首相と小沢氏が話をし
――今回の消費増税の素案を読んで、具体的にどんな感想を持ちましたか。
これは、私が代表質問で述べたり、我が党の予算委員会の質疑でも出された意見ですが、手順、段取りの問題とは別に、素案には大きく2つの問題があると思っています。
1つは、「消費税を8%、10%へ引き上げさせてくれ」ということは書いてあっても、税の制度設計が細部まできちんと考えられていない気がします。たとえば、民主党は軽減税率を考慮せず、簡素な給付措置を講じるようですが、その基本的内容は何ら定まっていません。
2つ目は、社会保障に関わる部分について、当初、民主党のマニフェストにあった年金の一元化や最低保障年金などの「看板」が、まだ掲げられていること。結局のところ彼らには、「年金の財源は税だ」という発想が色濃くある。我々は、これを現在採用されている社会保険方式でやるべきだと思っていますが、どちらでやるかによって、状況は大きく変わってきます。
ここで言う手順、段取りの方法として最も徹底した方法は、解散総選挙でしょう。ただし、それだけしか方法がないというと言うわけでもないと思うし、ここは議論が分かれるところです。
野田首相と小沢氏が話をし
党内議論に決着をつけるべし
――今回の消費増税の素案を読んで、具体的にどんな感想を持ちましたか。これは、私が代表質問で述べたり、我が党の予算委員会の質疑でも出された意見ですが、手順、段取りの問題とは別に、素案には大きく2つの問題があると思っています。
1つは、「消費税を8%、10%へ引き上げさせてくれ」ということは書いてあっても、税の制度設計が細部まできちんと考えられていない気がします。たとえば、民主党は軽減税率を考慮せず、簡素な給付措置を講じるようですが、その基本的内容は何ら定まっていません。
2つ目は、社会保障に関わる部分について、当初、民主党のマニフェストにあった年金の一元化や最低保障年金などの「看板」が、まだ掲げられていること。結局のところ彼らには、「年金の財源は税だ」という発想が色濃くある。我々は、これを現在採用されている社会保険方式でやるべきだと思っていますが、どちらでやるかによって、状況は大きく変わってきます。
では民主党は、年金制度が税金で維持できるかどうかについて、本当はどう思っているのか。彼ら自身、「税方式でやる」とは言ってみたものの、実際には税負担があまりにも重いため、これでは話が進まないと思っているフシもある。この際、そこをちゃんと整理すべきです。我々が今後も協議の場で問題点を指摘していくことは、こうした制度そのものに関わるポイントになると思います。
――すでに素案が閣議決定され、今後は国会で法案を審議する段階に入ります。今までのような事前協議がなくなった今、自民党はどう対応していきますか。
我々は国会の審議でも、こうした骨格に関わる問題提起を続けていくつもりです。また、それを指摘する声は必ず出てきます。その前に、自民党と民主党の間で個別に意見を調整するようなことはしません。あくまで国会のオープンな場で議論をしていきたい。
ただ、今後の審議の過程で、仮に自民党と民主党が歩みよることがあったとしても、今のバラバラな党内情勢を見る限り、民主党に消費増税を成し遂げられるパワーがあるかどうかは疑問です。たとえるなら、「箱根の山にカゴを担いで登ろうぜ」ということになり、「野田さん、あんた前を担ぐんだろう。俺は後ろを担ぐから」と一緒になって担いだら、野田さんが途中で腰砕けになって、一緒に谷底に転落してしまう。そんな危うさを私は感じています。
――そもそも審議の前に、党内での意見の一致や日本の社会保障を支えていく信念が民主党には足りない。まずはそれをどうにかすべきだ、ということでしょうね。
そうですね。真偽のほどはわかりませんが、民主党内でも、消費税増税反対の署名が相当集まっているという話を聞きます。それならば、まずは政権内で決着をつけるべきでしょう。はっきり言ってしまえば、野田さんと小沢(一郎)さんが一緒になって、「これからどうするのか」ということをちゃんと話し合うべきです。
デフレの継続で年金改革の
――自民党は社会保障と税について、長期的にどのような見通しを描いているのでしょうか。社会保障制度は、国民にとって非常に仕組みがわかりづらい。たとえば年金については、制度の持続性や今の給付水準が維持されるかどうかに、疑問が募っています。国民はそこをはっきり提示して欲しいのですが、ちゃんと説明がなされていないような気がします。

ただ、今後の審議の過程で、仮に自民党と民主党が歩みよることがあったとしても、今のバラバラな党内情勢を見る限り、民主党に消費増税を成し遂げられるパワーがあるかどうかは疑問です。たとえるなら、「箱根の山にカゴを担いで登ろうぜ」ということになり、「野田さん、あんた前を担ぐんだろう。俺は後ろを担ぐから」と一緒になって担いだら、野田さんが途中で腰砕けになって、一緒に谷底に転落してしまう。そんな危うさを私は感じています。
――そもそも審議の前に、党内での意見の一致や日本の社会保障を支えていく信念が民主党には足りない。まずはそれをどうにかすべきだ、ということでしょうね。
そうですね。真偽のほどはわかりませんが、民主党内でも、消費税増税反対の署名が相当集まっているという話を聞きます。それならば、まずは政権内で決着をつけるべきでしょう。はっきり言ってしまえば、野田さんと小沢(一郎)さんが一緒になって、「これからどうするのか」ということをちゃんと話し合うべきです。
デフレの継続で年金改革の
安全装置が発動できなかった
――自民党は社会保障と税について、長期的にどのような見通しを描いているのでしょうか。社会保障制度は、国民にとって非常に仕組みがわかりづらい。たとえば年金については、制度の持続性や今の給付水準が維持されるかどうかに、疑問が募っています。国民はそこをはっきり提示して欲しいのですが、ちゃんと説明がなされていないような気がします。
自民党は年金について社会保険方式が望ましいと思っており、その方式を前提としても、今後は10%程度の消費税増税が必要だと考えていますが、問題は政権が変わるごとに年金の骨格が変わってしまうこと。与野党で共通の土台がないことが制度をわかりづらくしており、国民の不安につながっているのだと思います。
自民党政権時代は、内閣が変わっても骨格となる方針は維持されてきました。しかし民主党政権になると、鳩山さんも菅さんも、「自民党とは違う政治をやってやるんだ」という気負いが強くなり過ぎ、これまでとは全く違うことをやろうとした。
たとえば、基礎年金の財源は半分まで税金で賄おうというところまでは、だいたい皆の意見が一致していても、そこから先を全部税でやるのか、保険方式でやるのかによって、方向性は大きく違ってきます。これは、東京駅から新幹線に乗って、大宮までは一緒でも、その後青森に行くのか、新潟に行くのかというほどの違いがある。したがって、現状では、結局、消費税をいったいどれだけ上げればいいのかわからない。さらに「政権が変わるたびにこうも方針をコロコロ変えられてはたまらない」と、国民は感じるでしょう。
また、現時点で「当面、消費税をこれだけ上げれば年金を維持できる」と考えていても、将来の経済情勢などによって、前提は変わってきます。政府はそのへんの議論もきちんと詰めていかなくてはいけない。
――年金制度については、かつて自民党も2004年に年金改正を行ない、「100年安心」をキャッチフレーズにしました。しかし、その後は結局、消費税増税が議論される状況になっています。その責任についても、国民に説明する必要があると思いますが。
当時は、マクロ経済スライドの導入や、基礎年金の2分の1を税金で賄う方向へ持っていくことなどを決めました。ただ、その後デフレが続いたため、マクロ経済スライドは発動されていません。基礎年金の2分の1を税金で補う点についても、財源に消費税を充てる前提になっていましたが、現時点でまだその段階に達していません。
また、保険料を払わない人が低年金、無年金になってしまう社会保険方式に関わる制度設計にも議論の余地があり、これは生活保護との関連で考えなくてはいけない課題でもあります。もう少し整理しなくてはいけない点は、確かにありますね。
年金は現行方式の改善で
――このへんの継続性はきちんと議論すべきでしょうね。一方で、自民党と民主党の政策の違いがよくわからないことも、国民が判断に迷う要因になっている気がします。自民党は「小さな政府」を目指していましたが、とりわけ政権末期以降、社会保障や行政サービスの充実という点で民主党と似通った政策を打ち出してきました。あれだけのことをやろうとすれば、当然大きな財源が必要になる。
また、現時点で「当面、消費税をこれだけ上げれば年金を維持できる」と考えていても、将来の経済情勢などによって、前提は変わってきます。政府はそのへんの議論もきちんと詰めていかなくてはいけない。
――年金制度については、かつて自民党も2004年に年金改正を行ない、「100年安心」をキャッチフレーズにしました。しかし、その後は結局、消費税増税が議論される状況になっています。その責任についても、国民に説明する必要があると思いますが。
当時は、マクロ経済スライドの導入や、基礎年金の2分の1を税金で賄う方向へ持っていくことなどを決めました。ただ、その後デフレが続いたため、マクロ経済スライドは発動されていません。基礎年金の2分の1を税金で補う点についても、財源に消費税を充てる前提になっていましたが、現時点でまだその段階に達していません。
また、保険料を払わない人が低年金、無年金になってしまう社会保険方式に関わる制度設計にも議論の余地があり、これは生活保護との関連で考えなくてはいけない課題でもあります。もう少し整理しなくてはいけない点は、確かにありますね。
年金は現行方式の改善で
十分メンテナンスは可能
――このへんの継続性はきちんと議論すべきでしょうね。一方で、自民党と民主党の政策の違いがよくわからないことも、国民が判断に迷う要因になっている気がします。自民党は「小さな政府」を目指していましたが、とりわけ政権末期以降、社会保障や行政サービスの充実という点で民主党と似通った政策を打ち出してきました。あれだけのことをやろうとすれば、当然大きな財源が必要になる。
小泉内閣以降、自民党は社会保障費の自然増分を毎年2200億円削ってきました。それまでは、財政が硬直化して、収入の多くが利払いと社会保障費に充てられ、高齢者ばかりにおカネが回って、子どもや若い世代に回らなくなっていた。これを解消しなければならなかったのです。しかし、それが「冷たい政治の代表」と見なされたこともあり、麻生内閣で方針を転換し、削減を止めました。 その結果、現在の水準の行政サービスや社会保障を維持するためには、10%程度の消費税増税が必要だということになりました。ただ、増税を唱え始める前の自民党が、社会保障費を何とかスリム化しようと訴え続けてきたことも事実です。これらの過程で、必ずしも国民の十分な理解を得られず、結果として下野する原因の1つとなってしまったことは、反省すべき点だと思いますが。
――日本の社会保障制度の難しいところは、国民にとって負担と受益の関係がわかりづらいことですね。「現在の負担に対してこういう受益があるんだ」ということを、国民にいかに理解してもらうか。制度改革を行なうにしても、そこが1つの課題になりそうです。年金も医療も、以前は7人で1人を支えていたのが、今は3人で1人、今後は1.2人で1人を支えなくてはいけなくなる。そうした状況で、年金で言えば所得代替率(現役世代の平均賃金に対する年金額の割合)約50%、保険料率の上限を約18%に固定したからと言っても、それで安心だと理解が得られるでしょうか。
年金については、政権交代時に民主党による「年金破綻」のキャンペーンが行き過ぎた結果、想像以上に国民の不安が増幅されてしまった側面が強いですね。それこそが年金未納者を増やし、制度の存続を脅かしかねない原因になりつつある。私は、現行方式を基礎として、問題点を整理していき、制度の安定性を高めることは可能だと思っています。
なぜ自民党に
――選挙で公表されるマニフェストの中でも、財政の支出や収入に関する政策はその根幹に位置しています。にもかかわらず、それを大きく方針転換することが、あまりにも安易に行なわれてしまっています。民主党は、「支出削減で財源を15~16兆円は捻出できる」と言って、やってみたら結局2~3兆円しか捻出できなかった。それに対する反省も評価も、基本的になされていません。
――日本の社会保障制度の難しいところは、国民にとって負担と受益の関係がわかりづらいことですね。「現在の負担に対してこういう受益があるんだ」ということを、国民にいかに理解してもらうか。制度改革を行なうにしても、そこが1つの課題になりそうです。年金も医療も、以前は7人で1人を支えていたのが、今は3人で1人、今後は1.2人で1人を支えなくてはいけなくなる。そうした状況で、年金で言えば所得代替率(現役世代の平均賃金に対する年金額の割合)約50%、保険料率の上限を約18%に固定したからと言っても、それで安心だと理解が得られるでしょうか。
年金については、政権交代時に民主党による「年金破綻」のキャンペーンが行き過ぎた結果、想像以上に国民の不安が増幅されてしまった側面が強いですね。それこそが年金未納者を増やし、制度の存続を脅かしかねない原因になりつつある。私は、現行方式を基礎として、問題点を整理していき、制度の安定性を高めることは可能だと思っています。
なぜ自民党に
支持が戻って来ないのか
――選挙で公表されるマニフェストの中でも、財政の支出や収入に関する政策はその根幹に位置しています。にもかかわらず、それを大きく方針転換することが、あまりにも安易に行なわれてしまっています。民主党は、「支出削減で財源を15~16兆円は捻出できる」と言って、やってみたら結局2~3兆円しか捻出できなかった。それに対する反省も評価も、基本的になされていません。
野田首相ご本人は、自分で消費税を何とかしたいという強い意思を持っているようですが、正直、答弁の内容を聞いていると相当苦しい。しかし我々も、「手続き論だけじゃないか」と言われることが多く、政治全体を見据えて議論していることが、なかなかうまく国民に伝わっていない気がします。我々自身、もう少し明晰な議論をできるよう、努力しなければならないとは思っています。――そうですね。たとえば政党支持率などを見ても、民主党が急落しているとは言え、自民党が大きく伸びているわけでもありません。これをどう解釈したらいいのか。「民意を汲み取ってくれる政党はもういない」と失望感が広がっているのか。だとしたら、どうすればいいのでしょうか。
そのことは、正面から受け止めなくてはいけないと思っています。やはり、長期政権を続けてきた自民党への飽きもあっただろうし、我々も政権にあぐらをかいていた面がなかったとは言えません。それで民主党への期待が膨らんだことは、わからなくもない。
それにしても、民主党の支持率が下がっている足もとで、なぜ自民党に支持が戻って来ないのか。現在の私の主張が、「党利党略でやっている」と捉えられている面が多分にあり、「これでは物事がちっとも進んでいかないじゃないか」という不満もあると思います。
ただ、有権者に少し考えていただきたいのは、自民党には色々な人がいても、それなりに1つのアイデンティティを持ってやってきたということ。それに対して民主党は、全く方向性が違う人たちが、「政権の座に就きたい」という一点だけで集まった政党です。第三極の行方も気になるところですが、結局アイデンティティのない人々が集まって政権をつくることだけを繰り返しても、どうにもなりません。このことについて、国民には冷静な判断をしてもらえれば嬉しいですね。
――谷垣総裁ご自身は、どんなアイデンティティをお持ちですか。
そのことは、正面から受け止めなくてはいけないと思っています。やはり、長期政権を続けてきた自民党への飽きもあっただろうし、我々も政権にあぐらをかいていた面がなかったとは言えません。それで民主党への期待が膨らんだことは、わからなくもない。
それにしても、民主党の支持率が下がっている足もとで、なぜ自民党に支持が戻って来ないのか。現在の私の主張が、「党利党略でやっている」と捉えられている面が多分にあり、「これでは物事がちっとも進んでいかないじゃないか」という不満もあると思います。
ただ、有権者に少し考えていただきたいのは、自民党には色々な人がいても、それなりに1つのアイデンティティを持ってやってきたということ。それに対して民主党は、全く方向性が違う人たちが、「政権の座に就きたい」という一点だけで集まった政党です。第三極の行方も気になるところですが、結局アイデンティティのない人々が集まって政権をつくることだけを繰り返しても、どうにもなりません。このことについて、国民には冷静な判断をしてもらえれば嬉しいですね。
――谷垣総裁ご自身は、どんなアイデンティティをお持ちですか。
私は総裁として、大きな方向性について発言していくことが必要だと思っています。基本は、自助・自立の精神を持つ人たちのために、彼らが頑張れる条件を整えるとともに、共助・公助する仕組みを充実することだと考えています。
――たとえば、社会保障制度についても、本来はそうした基本の議論から始めるべきなのでしょうね。「日本は自助の国だから、保険方式の制度を採用する」「保険方式は保険料を支払った人が、それに見合うサービスを受けられる」「どうしても不幸な事情でそれができない人については、セーフティネットで救う」といった流れをきちんと説明すれば、国民も納得できるのではないでしょうか。民主党も自民党も、「税方式だ」「いや、保険方式だ」とプロフェッショナルな議論をしていますが、国民から見ると、「なぜそういう議論になっているのか」がわかりづらい。
そうですね。だから、我々は野党になったときに、まず綱領の見直しから出発しました。今考えると、そういったことを、やはり一から考え直さないといけない時期が来ていたのでしょう。
自民党の綱領の基本は、やはり「自助」ができる世の中にしていくということ。これを、倦まず弛まず唱えていかないといけません。
このままでは将来の投資に
――最後になりますが、トータルで財政再建を考えると、対策としては、支出を削るか、収入を増やすか、成長率を上げるかといった3つのポイントを、どう組み合わせていくかになります。自民党としては、社会保障と税の一体改革と、その先にある財政再建との関係を、どう考えていますか。
世間には、「こんなに経済状態が悪いときに税金を増やしても、財政再建は無理だ」という議論があります。しかし、現状をほったらかしにして、経済の回復を待つのは現実的ではない。
ただでさえ、一般会計において歳入よりも公債発行額が多い状況が続いています。また、歳出のほとんどが税の利払いや社会保障に使われています。これでは、将来の投資に振り向ける予算など出て来ないし、経済のパイが増えないから、日本は成長しません。
そう考えると、やはり消費税の引き上げは、方向としては間違っていないと思います。
――景気の側面から考えると、長年悩まされているデフレを解消するために、どうインフレに持っていくかということも重要になります。先日日銀も、1%をメドとする中長期的な物価目標の導入を発表しました。増税を行なうのであれば、一方でインフレ目標や日銀法改正のように、もっと成長をサポートする方策をとるべきではないでしょうか。
今回日銀には、もう少し姿勢を明確にしようという意図があったと思います。しかし、欧米と比べて柔軟な姿勢を崩してはいません。それには色々な理由があると思いますが、ここであまり大胆なことをしても、日本全体の体温はそう簡単に上がらないのではないかと、私は感じます。ただ、日銀の判断については、一定の効果が出始めているとは思います。
そうですね。だから、我々は野党になったときに、まず綱領の見直しから出発しました。今考えると、そういったことを、やはり一から考え直さないといけない時期が来ていたのでしょう。
自民党の綱領の基本は、やはり「自助」ができる世の中にしていくということ。これを、倦まず弛まず唱えていかないといけません。
このままでは将来の投資に
振り向ける予算は出てこない
――最後になりますが、トータルで財政再建を考えると、対策としては、支出を削るか、収入を増やすか、成長率を上げるかといった3つのポイントを、どう組み合わせていくかになります。自民党としては、社会保障と税の一体改革と、その先にある財政再建との関係を、どう考えていますか。世間には、「こんなに経済状態が悪いときに税金を増やしても、財政再建は無理だ」という議論があります。しかし、現状をほったらかしにして、経済の回復を待つのは現実的ではない。
ただでさえ、一般会計において歳入よりも公債発行額が多い状況が続いています。また、歳出のほとんどが税の利払いや社会保障に使われています。これでは、将来の投資に振り向ける予算など出て来ないし、経済のパイが増えないから、日本は成長しません。
そう考えると、やはり消費税の引き上げは、方向としては間違っていないと思います。
――景気の側面から考えると、長年悩まされているデフレを解消するために、どうインフレに持っていくかということも重要になります。先日日銀も、1%をメドとする中長期的な物価目標の導入を発表しました。増税を行なうのであれば、一方でインフレ目標や日銀法改正のように、もっと成長をサポートする方策をとるべきではないでしょうか。
今回日銀には、もう少し姿勢を明確にしようという意図があったと思います。しかし、欧米と比べて柔軟な姿勢を崩してはいません。それには色々な理由があると思いますが、ここであまり大胆なことをしても、日本全体の体温はそう簡単に上がらないのではないかと、私は感じます。ただ、日銀の判断については、一定の効果が出始めているとは思います。
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